発信を続けたいのに続かない。ブログもXも、気づけば何週間も止まっている。同じ悩みを持つ一人社長や個人事業主の方は多いと思います。
実際、東京商工リサーチの2023年「企業のSNS運用に関するアンケート」調査(2023年8月実施・有効回答4,947社)では、54.8%の企業がSNSを運用しておらず、運用している企業でも29.3%が「効果は得られなかった」と答えています。多くの会社が、発信を始められないか、続けられずにいる。これは、はっきり表れている現象です。なお、これは社員のいる企業向けの調査ですが、工程を一人で背負う一人社長では、この負担はさらに重くなります。
私はNoBorderという会社で、AI導入の支援をしています。もともとは特別支援学校で保健体育を担当していた教員で、ITは得意ではありません。そんな私が思うのは、発信が止まるのは意志が弱いからではない、ということです。ネタ探しから公開までの全工程を一人で抱えていることが、発信が続かない一因になりやすい——というのが私の見立てです。工程が多すぎて、本業の合間に回しきれない。私自身、そう感じてきました。
そこで私が作ったのは、こういう仕組みです。発信を完全自動化する仕組みを作ったのではありません。AIに下ごしらえ(=AIに準備と下書きまでやってもらうこと)を任せ、会社の信用に関わる判断は自分で握る仕組みを作りました。 この記事では、私が実際にどう組んでいるかを、そのまま工程表として公開します。
発信が止まる原因は、投稿ではなく「投稿前」にある
投稿ボタンを押すこと自体は、数秒で終わります。しんどいのは、その手前です。ここを見落とすと、いくら「今日から毎日投稿するぞ」と決めても続きません。
ネタ探しから公開まで、毎回ゼロから始めている
一本書くたびに、何を書くか考え、調べ、構成を組み、文章を書き、画像を用意し、誤字を直し、公開する。この工程を毎回ゼロからやり直しています。一つひとつは小さくても、積み重なると本業を圧迫します。これでは続かなくなっても、無理はないと思います。
複数の媒体を、別々の仕事として抱えている
X、ブログ、noteと、発信の場所(これを「媒体」と呼びます。X・ブログなど)が増えると、それぞれを別の仕事として抱えることになります。同じ体験を三回書き直しているような状態です。媒体の数だけ工程が増えていき、一人ではさばききれなくなります。
発信すること自体が目的になっている
「毎日投稿する」が目標になると、中身より本数を追うようになります。すると、伝えたいことも薄くなり、書くのも苦しくなります。本来は、誰に何を届けたいかが先にあるはずです。
私が「完全自動化」をやめた理由
最初、私は「発信を全部AIに任せれば、この負担はなくなる」と考えました。結論から言うと、それはうまくいきませんでした。
最初は全部AIに任せようとして失敗した
最初はできるだけ多くをAIに任せようとしました。ところが、AIが作った文章の中に、自社の実際と少しずれた表現や、確認しきれない内容が混じることがありました。たとえばAIは、放っておくと「導入実績が豊富」のように、まだ事実と言い切れない表現を書いてくることがあります。会社の名前で出す以上、そこは見過ごせません。そこで「作業はAIに、判断は人が」と線を引き直しました。
この線引きは、苦い経験から決めたものです。最初のころ、自分の仕事の前提や背景をAIに渡さないまま丸ごと任せてしまい、返ってくるのは一般論ばかりで、その案件ごとの実態に合わない中身になりました。今は先に背景を渡したうえで、公開前に「これは自社の実際と合っているか」を自分で一つずつ確かめ、ズレたところを直してから出しています。
作業と判断を分けたら、私の場合はAIを毎日使えるようになった
全部任せようとするとうまくいきませんが、「調べる」「案を出す」「下書きする」といった下ごしらえに絞ると、AIはとても頼りになります。私の場合は、任せる範囲を狭めたことで、下書きにたどり着くまでの迷いが減り、あとは自分で確認するだけで済むようになりました。判断を人が持つと決めたから、安心して作業を渡せる。その結果、かえってAIを毎日使えるようになりました。
半自動は"未完成"ではなく、意図した安全設計
半分だけ自動、と聞くと中途半端に感じるかもしれません。ですが、これは手を抜いた結果ではなく、意図して選んだ形です。会社の信用に関わる部分を人の手元に残しておくこと。それが、発信を長く続けるための安全策になります。
私が実際に使っている「AIに任せる/人が握る」工程表
言葉で説明するより、表で見たほうが早いと思います。これが、私が実際に回している工程の分け方です。
| 工程 | AIに任せること | 人が握ること | 今の運用 |
|---|---|---|---|
| 発信の目的 | 考えの整理を手伝う | 誰に何を届けるか | 人が決める |
| 体験・素材 | メモの分類 | 実体験・主張・自社だけの情報 | 本人が入れる |
| リサーチ | 検索・論点の整理 | どの情報を採るか・解釈 | X調査は手元で動かせるときだけ |
| 下書き | 構成・文章案・媒体ごとの書き分け | 数字・事実・言葉づかい | Xは3〜5案を作って保存 |
| 画像 | アイキャッチの作成 | 内容と合うか・使うかの判断 | 画像生成AIで作成 |
| 最終確認 | 誤字などのチェック補助 | 公開してよいか・会社としての責任 | 人が承認 |
| 公開 | 承認後の操作の補助 | 何を出すかの最終判断 | Xはリプ手動・定期投稿は純正の予約機能、ブログは承認、LinkedIn/noteは手元で動かせるときだけ |
左の列(AIに任せること)が下ごしらえ、右の列(人が握ること)が判断です。この線引きさえ決めてしまえば、毎回ゼロから悩まずに済みます。もし「自分の場合、どこに線を引けばいいか分からない」という方は、記事末の無料AI診断で一緒に整理できます。
「これ、AIの会社だからできるのでは?」と思った方へ
正直にお伝えすると、この7つの工程は、私が今やっているゴールの一例です。全部を真似する必要はありません。始めるのは、たった3つで十分です。
- 体験をメモする
- AIに3〜5案を出させる
- 事実の確認と「公開」だけ自分でやる
ここから始めれば十分です。残りの工程は、続けられそうだと感じてから、少しずつ足していけば大丈夫です。
媒体ごとに、自動化の範囲を変えている
同じ「半自動」でも、媒体によって任せる範囲は変えています。それぞれ事情が違うからです。
Xは、リプライは手動、定期投稿はAIの下書き+純正の予約機能
X(@nobu_ai_lesson)では、リプライ(返信)は必ず自分の手で投稿しています。一方、定期的な自分の投稿は、AIに下書きを作らせ、X純正の予約投稿機能(無料)にのせて回しています。ここで大事にしているのは、有料のAPI連携を使わないことです。API連携は費用がかかったり、アカウントが止められる恐れがあるため避けています。純正の予約機能なら費用もかからず、下書きはAIに任せつつ、何を誰に届けるかという中身は自分で決められます。リプライの下書きもAIが手伝いますが、送信は自分で押します。
ブログは、下書きと画像をAIに、公開の承認は人が
ブログでは、下書きと画像(画像生成AIで作成)をAIが用意します。公開はスクリプト(あらかじめ用意した自動の手順。最初は使わなくて大丈夫です)で行いますが、その実行は必ず本人が承認してからです。最初は難しい仕組みは要りません。AIが書いた下書きを自分で読んで、コピーして貼り付けるだけで十分です。文章と画像の下ごしらえは任せ、外に出す最終判断だけは手元に残しています。
LinkedInとnoteは、私が試している一歩進んだやり方(最初はここまでやらなくて大丈夫)
ここは私が試している一歩進んだやり方なので、最初はここまでやらなくて大丈夫です。
2026年7月に、AIが原稿を作り、自分がログインした画面から公開する、という一歩進んだやり方を試し始めました。7月24日には、LinkedIn(個人プロフィール)とnoteへ、それぞれ1本ずつ公開できました。ただし、まだ試している段階で、手元の画面を動かせるときだけ公開でき、毎日ひとりでに投稿し続ける状態にはなっていません。
正直にお伝えすると、ここには実験中の部分があります。ブログでは「公開してよいか」の最終判断も操作も私が行い、Xはリプライを手動、定期投稿を純正の予約機能で回しています。LinkedInとnoteでは、原稿づくりから公開の操作まで、どこまで任せられるかを実験しているところです。だからこそ、まだ完全に手を離した毎日の運用には踏み切っていません。手でコピーして貼れば、こうした仕組みがなくても公開できます。
なお、LinkedInは会社ページはまだ作っておらず、今は個人プロフィールでの発信です。
ITが得意でない一人社長は、どこから始めればいいか
いきなり全部を仕組みにしようとすると、たいてい挫折します。私自身がそうでした。順番はこうです。
まず発信元を一つだけ決める
X、ブログ、noteを同時に始める必要はありません。まずは「ここに一本書く」という発信元を一つだけ決めます。一つで回るようになってから、他の媒体へ広げれば十分です。
体験メモからAIに案を作らせる
きれいな原稿を最初から書こうとしなくて大丈夫です。まずは、最初の3分でできることから始めてみてください。
- スマホかパソコンで、無料のAIチャット(例:ChatGPTの無料版)を開く
- お客さんに話したことや今日の出来事を、3〜4行そのまま書いて貼る
- 「このメモから、一人社長の私が発信できそうな話題を3つ、それぞれ短い一言で」と送る
返ってきた案は、コピーして貼り付けるだけで投稿できます。私もXの下書きは、雑なメモから3〜5案をAIに作らせて保存し、その中から自分で選んでいます(リプは手で、定期投稿は純正の予約機能で出します)。
事実確認と「公開」だけは自分でやる
AIが作った案は、必ず自分の目で確かめます。数字や事実が正しいか、自社の実際と合っているか。そして「これを世に出してよいか」の最終判断だけは、自分の手で行います。ここだけは人が握る。これが崩れなければ、下ごしらえはどんどん任せて構いません。
AIに任せてはいけない判断
私が「ここは人が握る」と決めている部分は、次のとおりです。
- 誰に何を届けるか、という発信の目的
- 自分の実体験や主張、自社だけが持っている情報
- 文章に載せる数字や事実が正しいかどうかの確認
- 会社の言葉づかい、表現の細かなニュアンス
- 公開してよいかどうかの、最終的な判断
- 何を外に出すか、という中身の最終判断(投稿の"操作"そのものは、Xの定期投稿のように純正の予約機能へ任せることもあります)
よくある質問
AIで書いた記事は検索で不利になりますか?
Googleは、役に立って独自性のある内容を評価すると言われています。AIを使ったこと自体より、確認もせず、体験も価値も薄い記事を、検索順位のためだけに数を増やすことが、かえって不利になりやすい——という理解です。だからNoBorderでは、AIに下書きを任せても、実体験を入れること・事実を確認すること・公開の判断をすることは、すべて人が担当しています。
Xの予約投稿は自動化すべきですか?
リプライは手動で行い、定期的な投稿はX純正の予約投稿機能(無料)を使って回しています。ポイントは、有料のAPI連携を使わないことです。API連携は費用がかかったり、アカウントが止められる恐れがあるため避けています。純正の予約機能なら費用もかからず、下書きはAIに作らせつつ、何を出すかの中身は自分で決められます。ここは各社の判断が分かれるところだと思います。
一人社長でも複数の媒体を運用できますか?
できます。ただし、いきなり全部を同時に、ではありません。まず一つの媒体で下ごしらえをAIに任せる形を作り、それが回ってから次へ広げる。下書きや画像の工程を任せられれば、抱える負担はだいぶ軽くなります。
発信を「作業」と「判断」に分けてみませんか
発信が続かないのは、あなたの意志の問題ではないと思います。一人で全工程を抱えていることが、大きな一因になりやすいからです。
無料AI診断では、今の発信を「AIに任せる作業」「人が握る判断」「あえて自動化しない部分」の3つに整理します。X・ブログ・noteのうち、どこから仕組みにすると負担が減るかを、一緒に確認します。
この記事で使った出典
- 東京商工リサーチ 2023年「企業のSNS運用に関するアンケート」調査:https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1197920_1527.html