ヒアリングメモからAIで提案書のたたき台を作ると、文章を読みやすく整える時間は減らせます。ただし、自然な文章になったことと、その内容を顧客へ約束してよいことは別です。
提案書には、価格、期限、提供範囲、担当、実現できることなど、相手が約束として受け取る情報が含まれます。ここを元のメモにない内容で埋めると、見た目は完成していても、送信後の認識違いにつながります。
そこでNoBorderでは、本文の推敲とは別に、約束に見える箇所を一覧へ抜き出して人が確認する考え方を使います。この記事では、ヒアリングメモから安全にたたき台を作り、送信前に未確定事項を止めるための手順を紹介します。
文章が自然でも、提案内容が確定したとは限らない
AIは、断片的なメモをつなぎ、見出しや説明を整えるのが得意です。一方で、入力が足りないと、一般的に妥当そうな内容で空白を補うことがあります。
たとえば、メモに「来月から開始を検討」とだけ書かれている場合、開始日が確定したような表現へ直してはいけません。「この業務も対応できそう」という会話も、提供範囲として承認されたとは限りません。相手の困りごとと、自社が実際に約束する内容を分ける必要があります。
提案書の失敗は、文章が下手なことだけではありません。事実、仮説、社内判断、未確認事項が一つの文章に混ざり、誰も境界を確認しないまま送られることです。
手順1:ヒアリングメモを四つに分ける
AIへいきなり「提案書を作って」と渡す前に、元のメモを次の四つへ分けます。分類できない内容は、無理にどこかへ入れず未確認事項として残します。
| 分類 | 入れる内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 確認済みの事実 | 相手が明言した現状、対象業務、利用中の手順 | 数字や固有名詞は原文と照合する |
| 相手の言葉 | 困りごと、希望、優先したいこと | こちらの解釈を本人の発言に変えない |
| こちらの仮説 | 改善候補、進め方の案、確認したい見立て | 確定事項として書かない |
| 未確認事項 | 不足している条件、社内判断、次に聞く質問 | もっともらしい答えで埋めない |
この四分類を残しておくと、提案書の一文がどの材料から来たかを戻って確認できます。個人情報や秘密情報は、提案書の構成に必要な範囲だけを扱います。利用するAIの契約や設定、社内ルールを確認できない場合は、実データを入力しません。
手順2:提案書の骨組みだけを先に作る
提案書は、次の六つの見出しへ分けると、空白と確認事項が見えやすくなります。
- 相談の背景
- 現在の課題
- 目指す状態
- 提案する進め方
- 役割分担と確認点
- 未確認事項と次の行動
この段階では、文章を完成させることより、どの欄に根拠があり、どの欄が不足しているかを見ます。空欄を無理に埋めず、「要確認」として残せる構造が重要です。
AIには、確認済みの材料を見出しへ配置し、重複をまとめ、読みやすい順番へ整える作業を任せます。価格を決める、納期を確約する、契約条件を作る、顧客が言っていない成果を約束する、といった判断は任せません。
手順3:本文から「約束に見える箇所」を抜き出す
たたき台ができたら、本文の校正とは別に、相手が約束として受け取る可能性がある箇所を一覧へ移します。最低限、提供範囲、担当、価格、期限、契約条件、実現可否の六つを確認します。
| 約束候補 | 本文の記述 | 根拠 | 確認状態 |
|---|---|---|---|
| 提供範囲 | 何をどこまで行うか | ヒアリングまたは社内の確定情報 | 確認済み/要確認 |
| 担当 | 誰が何を行うか | 役割分担の合意 | 確認済み/要確認 |
| 価格 | 金額、含まれる内容 | 承認済みの料金 | 確認済み/要確認 |
| 期限 | 開始日、提出日、完了条件 | 実行可能性と相手の希望 | 確認済み/要確認 |
| 契約条件 | 支払い、変更、終了に関する記述 | 正式な契約・社内確認 | 確認済み/要確認 |
| 実現可否 | できること、対象外のこと | 検証済みの手順と制約 | 確認済み/要確認 |
一覧の目的は、AIに最終判断をさせることではありません。人が確認すべき場所を本文から分離し、見落としにくくすることです。「要確認」が一つでも残っている場合は、顧客への送信を止めます。
手順4:元のメモと一覧を二方向で照合する
確認は二方向で行います。まず提案書から元のメモへ戻り、書かれていない数字、実績、発言、条件が足されていないかを見ます。次に元のメモから提案書へ進み、相手の重要な希望や、こちらが確認すると伝えた事項が抜けていないかを見ます。
文章だけを読み返すと、自然な表現に引っ張られて根拠の有無を見落としやすくなります。本文、約束の一覧、元のメモを別々に置くことで、読みやすさと事実確認を分けられます。
そのまま使えるAIへの依頼文
依頼文
以下のヒアリングメモを、確認済みの事実、相手の言葉、こちらの仮説、未確認事項の四つに分けてください。その後、相談の背景、現在の課題、目指す状態、提案する進め方、役割分担と確認点、未確認事項と次の行動の順で提案書のたたき台を作ってください。入力にない数字、実績、顧客の発言、価格、期限、契約条件は補わず、要確認と書いてください。最後に、提供範囲、担当、価格、期限、契約条件、実現可否を「約束の一覧」として抜き出してください。
この依頼文でできるのは、整理と下書きまでです。価格、値引き、納期、契約、法的判断、送信可否は、人が確認して決めます。
送信前の確認表
- 元のヒアリングメモを上書きせず残した
- 事実、相手の言葉、仮説、未確認事項を分けた
- 入力にない数字、実績、発言を補っていない
- 価格、期限、提供範囲、担当、契約条件、実現可否を一覧にした
- 一覧の「要確認」がすべて解消している
- 本文から原文、原文から本文の二方向で照合した
- 送信は担当者が最終確認した後に行う
AIで提案書を速く作ることより、どの内容を人が約束したのかをあとから説明できることが重要です。文章と約束の確認を分けることで、読みやすさに隠れた未確定事項を見つけやすくなります。
ヒアリングメモから提案書の骨組みを作る基本手順は、提案書のたたき台をAIで作る方法でも紹介しています。
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