AI導入で最初に選ぶ業務は、週に1回以上繰り返していて、渡す材料とできあがりの形が毎回ほぼ同じで、送信や公開の前に自分で止められる仕事です。「いちばん時間がかかっている仕事」や「売上に近い仕事」から選ぶと、最初の一歩としては大きすぎて、続けるかやめるかを判断できません。
この記事では、候補がいくつかあって決めきれないときに、どれを最初の1業務にするかを決める基準だけを扱います。候補の出し方や、選んだあとの進め方は別の記事にまとめてあり、末尾で案内します。
この選び方が当てはまる人
想定しているのは、個人事業主や従業員20名程度までの事業者で、社長自身が現場も担っている場合です。決める人と手を動かす人が同じなので、選んだその日から試せます。
次の場合は、そのままでは当てはまりません。
- 従業員が20名を超える:会社全体から選ばず、1つの部署の仕事に範囲を絞ってから同じ条件を当てます
- 作業をまるごと手放したい:この選び方は、人が最後に中身を確認する前提です。確認の工程を残せないなら、AI以外の方法も含めて比べたほうが早く済みます
- すでに1業務で測り終えている:次の候補は、この条件より「最初の業務で作った指示文や確認表を使い回せるか」で選ぶほうが進みます
最初の1業務を選ぶ5つの条件
候補ごとに、次の5つを○△×で埋めます。5つすべてが○の仕事から選びます。○が3つ以下の候補は、まだ最初の1業務には向きません。
| 条件 | 自分への質問 | ○にならない例 |
|---|---|---|
| 1.繰り返しがある | 先週も今週も、同じ仕事を1回以上やったか | 年に数回しかない仕事 |
| 2.材料と完成形が決まっている | 渡す情報と、できあがりの形(見出し・長さ・並び)が毎回ほぼ同じか | 相手ごとに書き方が毎回変わる |
| 3.時間の中身が準備に寄っている | その時間の多くを、決めることではなく、調べる・並べる・下書きに使っているか | 考えて決めることが仕事の中心 |
| 4.手前で止められる | 送信・公開・提出の前に、自分が中身を読んで止められるか | 届いた瞬間に自動で返す必要がある |
| 5.情報の扱いが済んでいる | 秘密情報を使わずに試せるか、使うなら扱い方の確認が済んでいるか | 顧客名簿をそのまま貼るしかない |
迷ったときに優先するのは1番です。繰り返しがない仕事では、うまくいったのか、たまたまだったのかを見分けられません。1回きりの仕事をAIに手伝わせるのは構いませんが、最初の1業務としては測れないので選びません。
3つの候補に当てはめてみる
たとえば、次の3つが候補に挙がったとします。同じ条件を当てると、選ぶ仕事は一つに絞れます。
| 候補 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 面談後のお礼メールの下書き | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 最初の1業務にする |
| 見積書の作成 | ○ | △ | △ | × | ○ | 間違いの代償が大きく、手前で止めにくい。後回し |
| 年1回の事業計画づくり | × | × | ○ | ○ | △ | 繰り返しがなく測れない。対象外 |
判定が割れたときは、○の数を数える前に条件1と条件4を見ます。この二つが×の仕事は、何回試しても、続けるかやめるかを決められません。
よくある選び方の失敗
いちばん時間がかかっている仕事から選ぶ
大きい仕事は工程が多く、どこが軽くなったのかが分かりません。時間の長い仕事を選ぶなら、その中の一工程まで小さくします。「問い合わせに自動で返す」ではなく「問い合わせの内容を3行に整理する」まで下げると、条件2と条件4が同時に満たせます。
頻度の高さだけで選ぶ
毎日やっていても、中身が毎回違えば同じ条件で比べられません。頻度は条件1の一部でしかなく、条件2とセットで見ます。
売上に直結する仕事から選ぶ
見積や請求は、間違えたときの代償が大きく、手前で止めるのも難しい仕事です。最初は、間違えても取り返せる仕事を選びます。
回数をこなせば分かると考える
ここは私の失敗です。SNSでの発信をAIで続け、41日間で100件投稿しました。結果は、リンクのクリックが0回でした。量は増えましたが、何を確かめるのかを先に決めていなかったため、続けるか変えるかを判断する材料が残りませんでした。数を増やしても、選び方の答えは出ません。
選んだあと、最初の3回で測ること
選んだ仕事が合っていたかどうかは、3回やれば分かります。多くの回数は要りません。次の4つだけを、1回ごとに書き留めます。
| 記録すること | 選び方の答え合わせになる理由 |
|---|---|
| 自分が使った時間(指示・確認・修正を含む) | 準備が軽くなったかが分かる。AIが動いている時間は数えない |
| 直した箇所 | 毎回同じ箇所を直しているなら、条件2がまだ甘い |
| 途中で止めた場面 | 条件4が実際に働いたかを確かめられる |
| 同じ手順で終わったか | 毎回やり方が変わるなら、その仕事はまだ形が決まっていない |
判定は単純です。3回とも同じ手順で終わったなら、選び方は合っていました。3回とも違う手順になったなら、仕事が大きすぎるか、条件2を満たせていません。その場合は候補の一覧に戻り、選び直します。
繰り返す仕事を選ぶ利点は、失敗にすぐ気づけることです。私は朝の定型作業を毎朝9時に自動で始まるようにしましたが、初日は起動した14分後にエラーで終わっていました。毎朝ある仕事なので、翌朝には止まっていると分かりました。年に数回の仕事なら、気づくのは何か月も先だったはずです。
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この記事が扱ったのは、その二つの間にある「候補の中から1つを選ぶ」ところだけです。
まずは先週の仕事を思い出して、5つの条件を当ててみてください。候補が出てこないときは、下のチェックリストで探せます。